管理監督者扱いで残業代を払わないという選択肢をとっているケースをよく目にしますが、そのほとんどが管理監督者性が低く、争いになったときに負ける可能性が高いものという状況です。
ある日突然、多額の未払残業代を支払わなければならなくなるといった状況を避けるためにも、改めて管理監督者に該当するかのチェックをしましょう。
特に、「役職者は残業がつかない」という運用をされている会社は要注意です。
管理監督者として有効かどうかの判断基準としては、2008年の某ファーストフードチェーン店の店長に関する裁判が有名ですが、今回は、スタートアップ企業を前提に、「スタートアップ企業で働く者や新技術・新商品の研究開発に従事する労働者への労働基準法の適用に関する解釈について(令和6年9月30日 基発0930第3号)」という新たな通達がでました。
内容を確認すると、スタートアップ企業以外にも、多くの中小企業に当てはまりそうなものとなっており、押さえておく必要がありそうです。
通達には管理監督者以外にも、労働者への該当性、機密の事務を取り扱う者への該当性、専門型裁量労働制の適用について書かれています。気になる方は合わせてご確認下さい。
管理監督者への該当性に関して
役職者等が管理監督者に該当するか否かについて
労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者であって、労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にあるかを、職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ、実態に即して総合的に判断することとなる。
職務内容、責任と権限、勤務態様及び賃金等の待遇を踏まえ以下の点を総合的に判断
- 労働条件の決定、その他労務管理について経営者と一体的な立場にある。
- 労働時間、休憩及び休日に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない重要な職務と責任がある。
- 現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある。
具体的には
以下の者であって、定期給与である基本給、役付手当等においてその地位にふさわしい待遇がなされていたり、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているものは、一般的には管理監督者の範囲に含めて差し支えないものと考えられる。
- 取締役等役員を兼務する者
- 部長等で経営者に直属する組織の長
- 1及び2と当該企業内において同格以上に位置づけられている者であって、経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当するもの(全社的なプロジェクト遂行の現場業務を統括する「プロジェクトリーダー※」や、全社的なプロジェクト全体の技術面に特化して統括する立場にある者など)
他方、企業によっては、役職者について、当該役職の職務内容等として社会通念上一般に想定されるものと、当該役職者の実際の職務内容等が異なる例も見られるところであり、企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であれば全てが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではない。
例えば、役職上は部長等に該当する場合であっても、経営や人事に関する重要な権限を持っていない、実際には出社・退社時刻を自らの裁量的な判断で決定できない、給与や一時金の面において管理監督者にふさわしい待遇を受けていないといった場合には、管理監督者には該当しないと考えられ、また、スタートアップ企業に支社や支店がある場合にあっては、当該支社や支店の部長等は上記②には該当しないと考えられるが、いずれにしても、実態に即して判断することとなる。
次のような権限を有している者
- プロジェクトチームの構成を決定する権限
- プロジェクトの取引に関する事項を決定する権限
- プロジェクトのスケジュールを決定する権限
管理監督者に該当しない場合
上記を踏まえて、自社の管理職が管理監督者に該当しない、あるいは該当しない可能性が高い場合は直ちに対策が必要です。
固定残業代の導入を検討したり、そもそも労働時間の集計方法が間違っていなかのチェックも実施しましょう。
もし不安を感じた場合はすぐにご相談ください。
参考
https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T241022K0010.pdf