労働基準法等の改正に向けて、2024年1月から労働基準関係法制研究会が開催されています。その第14回が2024年11月12日に開催され「議論のたたき台」の資料が公開されました。今後はこの内容に基づいて議論が進められ、年度内には報告書がでるようです。
1985年に労働者性の判断基準が作られてから約40年経過し、時代に合わせて法律上の労働者や事業を再定義する必要性が出てきました。加えて、労使コミュニケーションの在り方や労働時間法制に関しても、働き方の多様化に伴い検討が必要といった内容になっています。
今回は、労働時間法制に関して具体的にどのような内容が上がっているのかをご紹介いたします。
なお、今回は取り上げませんが労使コミュニケーションの在り方についての中で、労働者代表に関して言及されています。現在、労使協定等を締結する際にその都度選んでいる労働者代表ですが、労働組合がない企業は形骸化しているという現実があり、これにメスが入る可能性があります。
資料全体の内容
- 総論
- 労働基準法における「労働者」について
- 労働基準法における「事業」について
- 労使コミュニケーションの在り方について
- 労働時間法制の具体的課題について
労働時間法制の具体的課題について
最長労働時間規制(実労働時間規制)
- 時間外・休日労働時間の上限規制(原則:月45時間・年360時間/特別条項:単月100時間未満・複数月平均80時間以内・年720時間)に関しては、変更するための社会的合意を得るためには蓄積が不足しているのではないかと考えられるとされているため、当面改正の可能性は低いと思われます。
- 時間外や休日労働時間の開示制度が検討されています。
※現行法制では女性の職業生活における活躍の推進に関する法律や次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度などの企業による自主的な取組を促す仕組みを含め、各制度の目的に応じて様々な情報開示の仕組みが既に設けられています。 - テレワークなど柔軟な働き方への対応として、現行のフレックスタイム制にコアデイの概念を導入することが検討されています。これにより、テレワーク時は従来のフレックスタイム制の様な働き方をし、会社に出勤する際には従来の始業時間と終業時間に基づいた働き方をするなど、組み合わせに対応できます。
- 週の法定労働時間44時間特例に関して、利用している事業所が少なく、実態にそぐわないとして、廃止が検討されています。
- 管理監督者に対する健康・福祉確保措置の法制化及び、管理監督者等の要件の明確化が必要なことが言及されています。
労働からの解放の規制
- 休憩に関しては概ね現行法を維持するとしていますが、一斉付与に関しては検討が必要とされています。
- 休日に関しては、13日を超える連続出勤を禁止することが検討されています。
※労災保険における精神障害の認定基準:2週間以上にわたって休日のない連続勤務を行ったことが心理的負荷の一つの指標 - 法定休日を特定することの義務化が検討されています。どの程度までの特定が求められるかは今後の議論となるかと思いますが、現状「一週間の最後の休日を法定休日とする」という規定にしている会社は影響が大きいかもしれません。
- 勤務間インターバルは引き続き推進の方向性で、導入推進と法規制の強化が検討されています。
- 年次有給休暇に関しては、「2週間からなる年次有給休暇の連続取得」の推進の必要性検討、育児休業からの復帰や退職など、5日付与義務の1年に満たない労働者の扱いの改善を検討、賃金の算定方法に関して、通常の賃金を推進することなどが言及されています。
割増賃金規制
- 副業・兼業の労働時間に関して、健康確保に関しては引き続き通算し、割増賃金に関しては通算を要しないように改正が検討されています。
まとめ
多くの点で議論がされていますが、実現すれば実務に大きな影響があるものがいくつか見受けられます。具体的なことはこれから明確になっていくため、引き続きチェックが必要です。